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  細径同軸ケーブル用フィクスチャのDe-Embedding
    

測定状態


測定に使用するフィクスチャを2XThrough治具にセットした状態

   同軸ケーブルや差動ケーブルの特性をフィクスチャを使用して測定する場合
   フィクスチャの特性を考慮する必要があります。
   測定値にはフィクスチャの反射特性と通過特性が影響しています。
   被測定ケーブルは非常に低反射なのでフィクスチャをそれより低反射で製作
   する事は困難です。
   また、フィクスチャには伝送ロスも存在します。
   反射特性ではフィクスチャ内部の多重反射の影響で周期的なピークとディッ
   プが発生します。
   通過特性においてもフィクスチャの伝送ロスとミスマッチロスの影響が現れ
   ます。
   
   フィクスチャの影響を取り除くには、De-Embeddingが有効です。
   あらかじめフィクスチャの特性を測定し、そのSパラでDe-Embeddingを実行
   する事で、測定値からフィクスチャの特性を除去する事が可能になります。
   しかしながら、フィクスチャのSパラを求める事はフィクスチャの構造上
   困難でした。
   多くのフィクスチャは片端が同軸コネクタで他端が非同軸構造のためVNAの
   校正された同軸ポートを接続する事が困難であったためです。
   PLTSのAFRを使用すると、フィクスチャを対向させた2XThrough状態で各フィ
   クスチャのSパラを求める事が可能になります。
   2XThrough状態では両端とも同軸コネクタになるためVNAの校正されたポート
   に接続する事が可能になります。
   2XThroughを別に用意するのでは無く、測定に使用したフィクスチャで構成
   する事で、より正確なDe-Embeddingが可能となります。

    *PLTS:Keysight社ソフトウェア Physical Layer Test System
    *AFR:Keysight社ソフトウェア Automatic Fixture Removal
   
 フィクスチャのSパラ取得とDe-Embeddingの実行
    1.細径同軸ケーブルフィクスチャで被測定同軸ケーブルをVNAで測定する。
     この状態では、被測定同軸ケーブルに細径同軸ケーブル用フィクスチャ
     2台分の特性が加算された測定値が求まる。(「測定状態」参照)
    2.測定に使用したフィクスチャを2XThrough治具で対向させて接続し2倍長
     の伝送路を形成する。(「2XThrough治具」参照)
     VNAを接続してS2Pファイルを取得する。
    3.2XThrough治具で取得したS2PファイルをPLTSに取り込む。
    4.PLTSのAFRを使用してフィクスチャ単体のS2Pファイルを生成する。
     2XThrough治具で求めたS2Pファイルはフィクスチャ2台分の特性。
     AFRを使用する事で中央で半分に分離した各1台分のS2Pファイルが求まる。
    5.AFRで求まったフィクスチャ各1台のS2PファイルをVNAに取り込む。
     VNAのPortに接続したフィクスチャのS2Pファイルを付加する。
    6.VNAで被測定同軸ケーブルを測定している状態でDe-Embeddingを実行する。
     これにより、フィクスチャの特性が除去される。


                  S21
    
       De-Embedding=ONでフィクスチャのロスが除去されている。
                   S11
    
     De-Embedding=ONでフィクスチャ内部の反射が除去されている。
     De-Embedding=OFFで発生していたフィクスチャ内部の多重反射による
     ピーク・ディップが除去されている。